みちの句会 作品掲載

2017年8月からトップページにみちの句会の俳句を掲載しています。

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2024年11月

眼に留どむモネの点描花野かな めにとどむモネのてんびょうはなのかな  絢 
 兼題「眼の愛護デー」 槍穂高裾野彩るななかまど やりほだかすそのいろどるななかまど
   
謳 歌
  目をつむるフランス人形天高し めをつむるフランスにんぎょうてんたかし
   
みえこ
2024年10月
兼題「白露」
櫓穂を残して田仕事全うす ひつじほをのこしてたしごとまっとうす 水 棹
  彼の人は黄泉路半ばや宵花火 かのひとはよみじなかばやよいはなび
   
みえこ
  導なき老後を生きむ晩夏光 しるべなきろうごをいきむばんかこう
   
冬 吾
2024年9月
兼題「文月」
文月や過ぎたる日々はみな美しく ふみつきやすぎたるひびはみなはしく みえこ
  涼月や米寿の本懐道半ば りょうげつやべいじゅのほんかいみちなかば
   
冬 吾
  窓開けて風を入れてる熱帯夜 まどあけてかぜをいれてるねったいや
   
時 雨
2024年8月
兼題「夏至」
湯上りの児を追いかける天花粉 ゆあがりのこをおいかけるてんかふん みえこ
  夜更かしや眠気漂う夏至の頃 よふかしやねむけただようげしのころ
   
水 棹
  不規則に路面を叩く夏至の雨 ふきそくにろめんをたたくげしのあめ 冬 吾
2024年7月
兼題「祭り」
お捻りを手に爪立ちて待つ神輿 おひねりをてにつまだちてまつみこし 謳 歌
  鉢巻きの親子も担ぎ来る神輿 はちまきのおやこもかつぎくるみこし
   
小 楡
  鳥居出て街の徒となる神輿かな とりいでてまちのととなるみこしかな 冬 吾
2024年6月
兼題「立夏」
傘叩く音夏よ来い夏よ来い かさたたくおとなつよこいなつよこい 時 雨
  初夏やペンキの匂う船溜まり しょかやぺんきのにおうふなだまり
   
みえこ
  狭庭にも楽しさを知る鯉幟 さにわにもたのしさをしるこいのぼり 水 棹
2024年5月
兼題「桜」
満開の花を車窓にひとり旅 まんかいのはなをしゃそうにひとりたび 謳 歌
  花が散るまた花の散る風の空 はながちるまたはなのちるかぜのそら
   
時 雨
  浦風の絶えなき谷戸や花さかり うらかぜのたえなきやとやはなざかり みえこ
2024年4月
兼題「啓蟄」
突と開く扉のように咲く桜 とつとひらくとびらのようにさくさくら みえこ
  刻告げる無畏の梵鐘地虫出づ ときつげるむいのぼんしょうじむしいづ
   
冬 吾
  野仏に摘みしたんぽぽそっと置き のぼとけにつみしたんぽぽそっとおき 謳 歌
2024年3月
兼題「余寒」
階段の手摺頼りの余寒かな かいだんのてすりたよりのよかんかな 匡 代
  余寒なほ首まで浸かる露天風呂 よかんなおくびまでつかるろてんぶろ
   
謳 歌
  尼寺の垣を照らせる寒椿 あまでらのかきをてらせるかんつばき みえこ
2024年2月
兼題「初」
一湾の前の山嶺にある初日 いちわんのさきのやまねにあるはつひ みえこ
  初旅の切符は背広の内ポッケ はつたびのきっぷはせびろのうちぽっけ
   
冬 吾
  初富士や耳底に還る海の音 はつふじやじていにかえるうみのおと 泰 山
2024年1月
兼題「年用意」
畳紙を出して置くのも年の暮れ たとうしをだしておくのもとしのくれ 謳 歌
  大掃除と思うだけなの年の暮れ おおそうじとおもうだけなのとしのくれ
   
匡 代
  失恋の思い出とともに煤払い しつれんのおもいでとともにすすはらい めぐみ
2023年12月
兼題「霜降」
風が抽く野面の彩や新走り かぜがぬくのずらのいろやあらばしり みえこ
  送られし里の味もの菊膾 おくられしさとのあじものきくなます
   
冬 吾
  道端に光を放つ朝の霜 みちばたにひかりをはなつあさのしも 謳 歌
2023年11月
兼題「鰯雲」
故郷はあの尾のあたり鰯雲 ふるさとはあのおのあたりいわしぐも みえこ
  大漁にけっぱる漁港鱗雲 たいりょうにけっぱるぎょこううろこぐも
   
冬 吾
  昼の陽の強さ忘れし鰯雲 ひるのひのつよさわすれしいわしぐも 泰 山
2023年10月
兼題「新涼」
泡沫の生き様秋を歩きをり うたかたのいきさまあきをあるきをり 匡 代
  四辻は風立つところ凉新た よつつじはかぜたつところりょうあらた
   
みえこ
  一本の河原野菊に風寄りぬ いっぽんのかわらのきくにかぜよりぬ 小 楡
2023年9月
兼題「花火」
天井絵の龍も騒ぎし揚げ花火 てんじょうえのりゅうもさわぎしあげはなび みえこ
  遠き日の兄と遊んだ花火買い とおきひのあにとあそんだはなびかい
   
謳 歌
  大輪の花火も声も天に在り たいりんのはなびもこえもてんにあり 時 雨
2023年8月
兼題「紫陽花」
紫陽花の毬を叩いて去る童 あじさいのまりをたたいてさるわらわ みえこ
  瓊花をシャッター脇に空き店舗 たまばなをしゃったーわきにあきてんぽ
   
冬 吾
  紫陽花は騒がし過ぎる乙女かも あじさいはさわがしすぎるおとめかも 泰 山
2023年7月
兼題「風薫る」
機嫌よき空のひと日や軒薄暑 きげんよきそらのひとひやのきはくしょ みえこ
  着流しの上布に残る仕付け糸 きながしのじょうふにのこるしつけいと
   
冬 吾
  頂きを望みつ締める靴の紐 いただきをのぞみつしめるくつのひも 時 雨
2023年6月
兼題「母の日」
母の日やも一度母に戻りたし ははのひやもいちどははにもどりたし みえこ
  母の日や電話の次男元気だね ははのひやでんわのじなんげんきだね
   
冬 吾
  春雨や母の顔描きたる はるさめやははのかんばせえがきたる 時 雨
2023年5月
兼題「ものの芽」
ものの芽や日毎に知恵のつく曾孫 もののめやひごとにちえのつくひまご かずお
  ビル群を上に乗せたる花の雲 ビルぐんをうえにのせたるはなのくも
   
みえこ
  独白の漢の駄弁木の芽風 どくはくのおとこのだべんこのめかぜ 冬 吾
2023年4月
兼題「節分」
体力がなくても家長鬼やらひ たいりょくがなくてもかちょうおにやらひ かずお
  金髪にピアスの男節分会 きんぱつにピアスのおとこせつぶんえ
   
みえこ
  鬼やらひ天守で見伏す鬼瓦 おにやらひてんしゅでみふすおにがわら 冬 吾
2023年3月
兼題「寒の雨」
そぞろ雨濡れにまかせる寒椿 そぞろあめぬれにまかせるかんつばき 匡 代
  着膨れて漸く辿る鄙の宿 きぶくれてようやくたどるひなのやど
   
小 楡
  寒空に点となりゆく航空機 さむぞらにてんとなりゆくこうくうき みえこ
2023年2月
兼題「手袋」
手袋の指さす先の訪ね宿 てぶくろのゆびさすさきのたずねやど 冬 吾
  手袋やつなぐ手夫の照れもなく てぶくろやつなぐてつまのてれもなく
   
みえこ
  病む妻に長居の客や冬の暮れ やむつまにながいのきゃくやふゆのくれ かずお
2023年1月
兼題「小六月」
昼と夜を頒る緞帳日の短か ひるとよるをわけるどんちょうひのみじか みえこ
  食い初めの祝いを待てり花椿 くいぞめのいわいをまてりはなつばき
   
かずお
  ふる里の青空つれて小六月 ふるさとのあおぞらつれてころくがつ 泰 山
2022年12月
兼題「鍋」
今生のひとこま妻と温め酒 こんじょうのひとこまつまとぬくめさけ かずお
  終戦後雑炊鍋に腹満たす しゅうせんごぞうすいなべにはらみたす
   
匡 代
  その末は鳥の餌となる木守柿 そのすえはとりのえとなるきもりかき 時 雨
2022年11月
兼題「白露」
食欲をお覚ゆこの頃白露かな しょくよくをおぼゆこのころはくろかな 匡 代
  木道を静かに歩く白露かな もくどうをしずかにあるくはくろかな
   
泰 山
  残りたる虫惜別の声哀れ のこりたるむしせきべつのこえあわれ 小 楡
2022年10月
兼題「夏の果て」
最近の造語に悩む夏の果て さいきんのぞうごになやむなつのはて かずお
  惜しみなくひと日を終ゆる花木槿 おしみなくひとひをおゆるはなむくげ
   
みえこ
  勝敗の一球無常夏終わる しょうはいのいっきゅうむじょうなつおわる 冬 吾
2022年9月 何事もなかったように夕涼み なにごともなかったようにゆうすずみ みえこ
  暫くは濡れにまかせる凉雨かな しばらくはぬれにまかせるりょううかな
   
冬 吾
  打ち水や又打ち水や露地の店 うちみずやまたうちみずやろじのみせ 小 楡
2022年8月 二筋のうねり残してカヌー過ぐ ふたすじのうねりのこしてかぬーすぐ 匡 代
  雑魚寝するサーフボードや凪の浜 ざこねするさーふぼーどやなぎのはま
   
冬 吾
  祝祭の音を遠くに土用波 しゅくさいのおとをとおくにどようなみ みえこ
2022年7月 豊かなる余生に夏の来たりけり ゆたかなるよせいになつのきたりけり かずお
  おはじきの乾しき音や五月雨るる おはじきのかわしきおとやさみだるる
   
みえこ
  雑然の居場所も既に梅雨入りかな ざつぜんのいばしょもすでにつゆいりかな 冬 吾
2022年6月
兼題「立夏」
礁噴く波の秀白き青葉潮 いくりふくなみのほしろきあおばしお みえこ
  逞しき鬣京の競べ馬 たくましきたてがみきょうのくらべうま
   
冬 吾
  噴水や水の命の競い合い ふんすいやみずのいのちのきそいあい かずお
2022年5月
兼題「若」
八十に八足す若さ夕朧 はちじゅうにはちたすわかさゆうおぼろ みえこ
  走るごと過ぎし青春朧月 はしるごとすぎしせいしゅんおぼろづき
   
小 楡
  微笑みつマスクを外す春日かな ほほえみつますくをはずすはるびかな 匡 代
2022年4月 古雛と笑いつ交わすにごり酒 こひなとわらいつかわすにごりざけ かずお
 兼題「春・当期雑詠」 春風やベンチは二人だけの巾 はるかぜやべんちはふたりだけのはば
   
みえこ
  動かない形見の時計春一番 うごかないかたみのとけいはるいちばん 冬 吾
2022年3月
兼題「寒の内」
極寒の一ト日居留守を欲しいまま ごっかんのひとひいるすをほしいまま みえこ
  背を正し老いを楽しむ冬帽子 せをただしおいをたのしむふゆぼうし
   
かずお
  寒風に頼りなき身を抗えり かんぷうにたよりなきみをあらがえり 冬 吾
2022年2月
兼題「初」
煩悩をいくつ越えたか除夜の鐘 ぼんのうをいくつこえたかじょやのかね 匡 代
  初吟の声は大きく息を吸い はつぎんのこえはおおきくいきをすい
   
小 楡
  火の神よ天へ届けよこの吉書 ひのかみよてんへとどけよこのきつしょ 耕 女
2022年1月
兼題「年の瀬」
生涯をひきずって来し開戦日 しょうがいをひきずってきしかいせんび かずお
  年の瀬の枷をはずしている生活 としのせのかせをはずしているくらし
   
みえこ
  お座なりの世過ぎよもあれ年用意 おざなりのよすぎよもあれとしようい 冬 吾
2021年12月
兼題「立冬」
立冬や軒に忘れし鉢一つ りっとうやのきにわすれしはちひとつ 時 雨
  嬉々として小鳥啄ばむ木守柿 ききとしてことりついばむきもりかき
   
匡 代
  冬に入る東尋坊の風もまた ふゆにいるとうじんぼうのかぜもまた 泰 山
2021年11月
兼題「長月」
着古しの父の野良着や捨て案山子 きふるしのちちののらぎやすてかかし 冬 吾
  日の入りは加速の一途鳥渡る ひのいりはかそくのいっととりわたる
   
みえこ
  四代の親子揃うや秋の寺 よんだいのおやこそろうやあきのてら かずお
2021年10月
兼題「山粧う」
秋霖や我が来し方を謳うかに しゅうりんやわがきしかたをうたうかに かずお
  山粧う四駆の旅も今昔 やまよそうよんくのたびもいまむかし
   
みえこ
  分水嶺影を重ねて山粧う ぶんすいれいかげをかさねてやまよそう 冬 吾
2021年9月
兼題「育」
健やかに老い育みて墓洗う すこやかにおいはぐくみてはかあらう かずお
  驟雨なる今お昼寝の保育園 しゅううなるいまおひるねのほいくえん
   
みえこ
  学び舎の女先生百日紅 まなびやのおんなせんせいさるすべり 小 楡
2021年8月
兼題「背」
妻の背に歳月のあり盆用意 つまのせにさいげつのありぼんようい かずお
  雨を背に蝦蟇の瞑想一途なる あめをせにがまのめいそういちずなる
   
みえこ
  黙座する父の背中や夕端居 もくざするちちのせなかやゆうはしい 冬 吾
2021年7月
兼題「祭」
亡き友の孫の継ぎ享く祭笛 なきとものまごのつぎうくまつりぶえ みえこ
  疫去れと祈りをこめし笛太鼓 えきされといのりをこめしふえたいこ
   
泰 山
  遠近に祭囃子やビル谺 おちこちにまつりばやしやびるこだま 小 楡
2021年6月
兼題「山滴る」
山滴る人は自粛の殻に入り やましたたるひとはじしゅくのからにいり みえこ
  石清水棚田潤す幾何模様 いわしみずたなだうるおすきかもよう
   
冬 吾
  滴りの山ふところや水の音 したたりのやまふところやみずのおと かずお
2021年5月 万愚節見知らぬ人に辞儀をして ばんぐせつみしらぬひとにじぎをして ひかり
 兼題「四月馬鹿&当季雑詠」 啓蟄に人は蟄居強いられて けいちつにひとはちっきょしいられて
   
かずお
  人類の墓場は宇宙四月馬鹿 じんるいのはかばはうちゅうしがつばか みえこ
2021年4月
兼題「桜」
相棒となりしマスクや初桜 あいぼうとなりしマスクやはつさくら みえこ
  手櫛する髪の乱れや桜東風 てぐしするかみのみだれやさくらごち
   
冬 吾
  華やかさ寂しさもあり桜花 はなやかささびしさもありさくらばな かずお
2021年3月
兼題「水」
断崖を的に陽の射る雨水かな だんがいをまとにひのいるうすいかな みえこ
  初場所やコロナに負けぬ力水 はつばしょやころなにまけぬちからみず
   
かずお
  露天風呂水面に映る寒の月 ろてんぶろみなもにうつるかんのつき 匡 代
2021年2月
兼題「雪」
樏の一歩で確と道をつけ かんじきのいっぽでしかとみちをつけ 冬 吾
  しんしんと僧院の朝雪明り しんしんとそういんのあさゆきあかり
   
泰 山
  混浴の峪湯や其処に雪女 こんよくのたにゆやそこにゆきおんな みえこ
2021年1月
兼題「ひかり」
月光の窓閉じて聞く虎落笛 げっこうのまどとじてきくもがりふえ みえこ
  初春や琥珀の光大吟醸 はつはるやこはくのひかりだいぎんじょう
   
冬 吾
  日向ぼこ猫の欠伸につられけり ひなたぼこねこのあくびにつられけり かずお
2020年12月
兼題「道」
芒原真一文字に遊歩道 すすきはらまいちもんじにゆうほどう 時 雨
  路地裏の風情一変暮れに秋 ろじうらのふぜいいっぺんくれにあき
   
かずお
  黄落や我が歩に余る並木道 こうらくやわがほにあまるなみきみち みえこ
2020年11月
兼題「風」
転寝の心地よい風九月なり うたたねのここちよいかぜくがつなり かずお
  十日夜樹樹の騒立つ風の中 とおかんやきぎのさわだつかぜのなか
十日夜=10月10日土竜(もぐら)叩きの行事
小 楡
  秋風を切ってバイクの若き僧 あきかぜをきってばいくのわかきそう 冬 吾
2020年10月
兼題「秋の草」
乾びたる路肩に戦ぐえのこ草 かびたるろかたにそよぐえのこぐさ
 
みえこ
  叢の飛蝗にたじろぐ子犬かな くさむらのばったにたじろぐこいぬかな
 
冬 吾
  卒寿なお長生きしてネと栗ご飯 そつじゅなおながいきしてねとくりごはん
 
匡 代
2020年9月
兼題「八月を詠む」
ふる里に思いを馳せる夏の空 ふるさとにおもいをはせるなつのそら
 
泰 山
  海山も遠くになりし夏休み うみやまもとおくになりしなつやすみ
 
匡 代
  鬼籍なる父母は年下盆の月 きせきなるふぼはとししたぼんのつき
 
みえこ
2020年8月
兼題「八月を詠む」
竹簾かけて和みし佇まい たけすだれかけてなごみしたたずまい
 
かずお
  齢少し戻す心算の夏帽子 としすこしもどすつもりのなつぼうし
 
みえこ
  鎌を手に姉さん被りの草むしり かまをてにあねさんかぶりのくさむしり
 
忠 幸
2020年7月
兼題「梅雨」
絵団扇の見返り美人古りもせず えうちわのみかえりびじんこりもせず
 
みえこ
  梅雨の路地大型犬の大欠伸 つゆのろじおおがたけんのおおあくび
 
匡 代
  鬩ぎ合う入道雷神梅雨の雲 せめぎあうにゅうどうらいじんつゆのくも
 
冬 吾
2020年6月
兼題「春の海&端午の節句」
時の疫荒れ狂うか春の海 ときのえきあれくるうかはるのうみ
 
かずお
  人隔つ三尺の距離五月来る ひとへだつさんじゃくのきょりごがつくる
 
みえこ
  今日の詩歩春の浜へ九十歩 きょうのしほはるのはまへくじゅうぽ
 
冬 吾
2020年5月
兼題「朝寝&春眠」
春眠や鐘の音遠き大楽寺 しゅんみんやかねのねとおきだいらくじ
 
匡 代
  春眠や人生羈旅の宝とし しゅんみんやじんせいきりょのたからとし
 
かずお
  朝寝して雨の音にも心足る あさねしてあめのおとにもこころたる
 
みえこ
2020年4月
兼題「二月を詠む」
師を囲み言葉織りなす春隣 しをかこみことばおりなすはるどなり
 
耕 女
  訪ね来し珍客二月の貌をして たずねきしちんきゃくにがつのかおをして
 
冬 吾
  早春の光を纏う遠き峰峰 そうしゅんのひかりをまとうとおきねね
 
みえこ
2020年3月
兼題「二月を詠む」
初雪や季寄せを閉じし師の庵 はつゆきやきよせをとじししのいおり
 
みえこ
  瑠璃越しの日だまり静か初雀 るりごしのひだまりしずかはつすずめ
 
おか女
  初釜や裾を正してにじり口 はつがまやすそをただしてにじりぐち
 
小 楡
2020年2月
兼題「門・戸・扉」
山門に枯れ葉舞い散る大楽寺 さんもんにかれはまいちるだいらくじ
 
かずお
  硝子戸に今朝も寒さの結露見ゆ がらすどにけさもさむさのけつろみゆ
 
冬 吾
  朝日受け垣の南天きらり映ゆ あさひうけかきのなんてんきらりはゆ
 
匡 代
2020年1月 炉を開く五重の塔を借景に ろをひらくごじゅうのとうをしゃくけいに
 
みえこ
兼題「7・5・3数字を入れて」 千歳飴ふりふり若殿宮参り ちとせあめふりふりわかとのみやまいり
 
小 楡
  待ち遠し東京五輪の晴れ舞台 まちとおしとうきょうごりんのはれぶたい
 
かずお
2019年12月
兼題「秋の七草」
藤袴庭に伏せさす暴風雨 ふじばかまにわにふせさすぼうふうう
 
かずお
  墓域いま色なき風やこぼれ萩 ぼいきいまいろなきかぜやこぼれはぎ
 
忠 幸
  潮の色美し岬や枯れすすき しおのいろはしきみさきやかれすすき
 
匡 代
2019年11月
兼題「仲秋」
野に山に彩り初めし秋半ば のにやまにいろどりはじめしあきなかば
 
みえこ
  仲秋や夜空に見とれ彷徨す ちゅうしゅうやよぞらにみとれほうこうす
 
泰 山
  一瞥の長押陣取る秋団扇 いちべつのなげしじんどるあきうちわ
 
冬 吾
2019年10月
兼題「汗」
汗拭くや庭の剪定さっぱりと あせふくやにわのせんていさっぱりと
 
忠 幸
  血と汗の勤労動員終戦忌 ちとあせのきんろうどういんしゅうせんき
 
かずお
  球場の汗までしょってる売り子かな きゅうじょうのあせまでしょってるうりこかな
 
冬 吾
2019年9月
兼題「当期雑詠」
遠雷や袂を分かつ国さかい えんらいやたもとをわかつくにさかい
 
泰 山
  紫陽花や七転び八起の言葉ふと あじさいやななころびやおきのことばふと
 
かずお
  往来の声透き通る夏のれん おうらいのこえすきとおるなつのれん
 
みえこ
2019年8月
兼題「父の日」
父の日や老いても確と脛持てり ちちのひやおいてもしかとすねもてり
 
みえこ
  父の日や子や孫と酌むこの旨さ ちちのひやこやまごとくむこのうまさ
 
かずお
  父の日や引き出し奥の肥後守 ちちのひやひきだしおくのひごのかみ
 
冬 吾
2019年7月
兼題「連休」
連休の書肆に並みいる万葉集 れんきゅうにしょしになみいるまんようしゅう
 
みえこ
  ヨットハーバー十連休の風を待つ よっとはーばーじゅうれんきゅうのかぜをまつ
 
冬 吾
  休みたい休みたくない大連休 やすみたいやすみたくないだいれんきゅう
 
泰 山
2019年6月
  
わが友の行き方知らず彼岸花 わがとものいきかたしらずひがんばな
 
泰 山
  治癒し妻三年ぶりの雛飾る ちゆしつまさんねんぶりのひなかざる
 
忠 幸
  鐘の音に目覚めて暗き花の冷え かねのねにめざめてくらきはなのひえ
 
匡 代
2019年5月
兼題「流」
荒東風の流れに揺るる舫船 あらこちのながれにゆるるもやいぶね
 
みえこ
  ビル街の人の流れも四月かな びるがいのひとのながれもしがつかな
 
冬 吾
  恋猫の叫び闇夜を震わせて こいねこのさけびやみよをふるわせて
 
匡 代
2019年4月
兼題「雲」
決意せり「行雲流水」年新た けついせりこううんりゅうすいとしあらた
 
かずお
  冬雲を抜け出て機窓無の世界 ふゆぐもをぬけでてきそうむのせかい
 
耕 女
  おお雲雀唄う俺らは冬帽子 おおひばりうたうおいらはふゆぼうし
 
泰 山
2019年3月 開門の迎賓館や春の詩 かいもんのげいひんかんやはるのうた
 
小 楡
  手作りの飾り門扉に待つ元旦 てづくりのかざりもんぴにまつあした
 
耕 女
  声甘ゆ猫のおねだり淑気満つ こえあまゆねこのおねだりしゅくきみつ
 
かずお
2019年2月 日暦の痩せゆく平成数えけり ひめくりのやせゆくへいせいかぞえたり
 
冬 吾
  平成の終の年賀や恙なし へいせいのついのねんがやつつがなし
 
小 楡
  米寿過ぐ昭和・平成虎落笛 べいじゅすぐしょうわ・へいせいもがりぶえ
 
かずお
2019年1月 野天風呂裾一面の枯れ尾花 のてんぶろすそいちめんのかれおばな
 
匡 代
  初富士や佳き日々なれと仰ぎたる はつふじやよきひびなれとあおぎたる
 
小 楡
  まみえたる天女の化身寒牡丹 まみえたるてんにょのけしんかんぼたん
 
耕 女
2018年12月 目指し食い昭和の味を懐かしむ めざしくいしょうわのあじをなつかしむ
昭和時代の懐古を思い起こして
かずお
  秋うらら峠の茶屋に五平餅 あきうららとうげのちゃやにごへいもち
ハイキングで立ち寄った茶屋でひと休み
泰 山
  柴又やビラの寅さん串団子 しばまたやびらのとらさんくしだんご
寅さんのビラが今も語りかけるような一こま
匡 代
2018年11月 盆の波漂い滾り岩を打つ ぼんのなみただよいたぎりいわをうつ 冬 吾
  敗戦日青空だけが無傷なり はいせんびあおぞらだけがむきずなり かずお
  故郷はあの尾の辺り鰯雲 ふるさとはあのおのあたりいわしぐも みえこ
2018年10月 花火果て余韻の匂う土手通り はなびはてよいんのにおうどてどおり
大田区の平和宣言都市花火大会後の一コマ
かずお
  六三四塔ここまでお出で揚花火 むさしとうここまでおいであげはなび
六三四塔=スカイツリーより花火見物か?
泰 山
  遠花火の音を肴に酌み交す とおはなびのおとをさかなにくみかわす
花火の音を聞きながら夏の夜の楽しい酒を・・・
きよし
2018年9月 木陰行く暑中見舞いの傘の佳人 こかげいくしょちゅうみまいのかさのひと
傘の佳人が格調高い句として
小 楡
  七夕に記すひと時の真顔なり たなばたにきすひとときのまがおなり
何をお願いしようかと真剣な顔で・・・
耕 女
  今日有ると家族三代盆供養 きょうあるとかぞくさんだいぼんくよう
三代の家族で先祖の御霊に感謝と報告か?
匡 代
2018年8月 渓流の音の高まる梅雨の宿 けいりゅうのおとのたかまるつゆのやど
梅雨時の水の流れの変化を詠む
きよし
  青梅雨や古刹の坂の石畳 あおつゆやこさつのさかのいしだたみ
青葉の中の梅雨、由緒ある古寺を行く山道
冬 吾
  梅雨冷えや炭火も馳走と母笑う つゆびえやすみびもちそうとははわらう
炭火で暖をとるか、それとも馳走作りか?
小 楡
2018年7月 新緑や登山電車の見え隠れ しんりょくやとざんでんしゃのみえかくれ
新緑に登山電車が、おもちゃの車両のように・・・
きよし
  緑摘む今を盛りの牧の原 みどりつむいまをさかりのまきのはら
新茶の香りまで感じてきます。
みえこ
  新緑や石山寺は雨の中 しんりょくやいしやまでらはあめのなか
新緑の雨にたたずむ古寺に手を合わす。
泰 山
2018年6月 新学期先生児童に光る窓 しんがっきせんせいじどうにひかるまど
ピカピカの新入生、先生 新学期の明るい句です。
匡 代
  ウインドーでネクタイ直す就活生 ういんどーでねくたいなおすしゅうかつせい
就職活動生の緊張した景が感じられます。
冬 吾
  白蓮のこぼれる窓辺珈琲タイム びゃくれんのこぼれるまどべこーひーたいむ
珈琲タイムとは生活の豊かさを感じます。
小 楡
2018年5月 春風や待ち詫ぶ友は黄泉の人 はるかぜやまちわぶともはよみのひと
選者評:追悼の深い句です。 黄泉=亡くなった人の魂が行くというところ。
かずお
  まだ何処か身を離れざる春の風邪 まだどこかみをはなれざるはるのかぜ
選者評:平常を良くまとめられました。
きよし
  芝駆ける馬のたてがみ風光る しばかけるうまのたてがみかぜひかる
選者評:見事  ”風光る”  が効いています。
小 楡
2018年4月 観梅や缶コーヒーを握りしめ かんばいやかんコーヒーをにぎりしめ 凡 妻
  肩寄せて梅一輪の隠れ宿 かたよせてうめいちりんのかくれやど 小 楡
  母の忌や梅の和菓子を供えけり ははのきやうめのわがしをそなえけり かずお
2018年3月 賀状にも悲喜こもごもの時流れ がじょうにもひきこもごものときながれ
年賀状の添え書きなどを、読むとその時間の過去が見えてくる。
ふみお
  北風に向かう敵なしおらが声 きたかぜにむかうてきなしおらがこえ
北風に向かって負けじとばかり大きな声で独り言・それとも演歌かな。
泰 山
  新聞は常のごと来し大旦 しんぶんはつねのごときしおおあした
大旦=元旦の朝いつも通りに新聞が配達されることの幸せと感謝
みえこ
2018年2月 暖炉燃ゆ箱根の宿のはなれ部屋 だんろもゆはこねのやどのはなれべや
あなたならこの光景をどう理解しますか?
きよし
  徳利ある少しみだらな囲炉裏端 とっくりあるすこしみだらないろりばた
部屋の囲炉裏を囲んでの大徳利と男の会話も感じられます
みえこ
  初雪や結露にかすむ街灯 はつゆきやけつろにかすむまちあかり
外は初雪家の中はストーブの暖かさとのとりあわせ
匡 代
2018年1月 裸木となりて新たな生命待つ はだかぎとなりてあらたないのちまつ
最後の枯れ葉も脱ぎ捨てて春を待つ木々
かずお
  とくとくと升目こぼるる新走り とくとくとますめこぼるるあらばしり
その年の収穫米で作った新酒をなみなみと注ぐ
冬 吾
  ゆれる灯も山車も囃も秋祭 「ゆれるひもだしもはやしもあきまつり」
飛騨高山祭で山車の勇壮さとお囃子の賑わい
小 楡
2017年12月 声援のお国訛りや運動会 せいえんのおくになまりやうんどうかい
飛び交う応援がどこのお国言葉か、これも面白い
青 木
  散歩道何方の化身彼岸花 さんぽみちどなたのけしんひがんばな
曼殊沙華、死人花、梵語で天上に咲く花と言う
匡 代
  跳び箱を跳ぶが如きに飛蝗はね とびばこをとぶがごときにばったはね
草むらのバッタの軽快な跳躍、若き往時を重ね
きよし
2017年11月 名月や空のカンバス神の業 めいげつやそらのカンバスかみのわざ
満月と空一面のスケールの大きさを詠む
耕 女
  屋台の灯落とし幕あく星月夜 やたいのひおとしまくあくほしづきよ
屋台の提灯が消えたあとの夜空一面の星
冬 吾
  追い駆けるゴールは何処枯れ落葉 おいかけるゴールはいずこかれおちば
風に舞う落ち葉がまるでかけっこしているみたい
ふみお
2017年10月 橅木立休むことなし蝉しぐれ ぶなこだちやすむことなしせみしぐれ
一段と暑さをかきたてる蝉の鳴き声
きよし
  盆休暇陸・海・空の臨時便 ぼんきゅうかりく・うみ・そらのりんじびん
海外、リゾート、故郷への大移動
凡 妻
  通り雨蟻んこの列走り出す とおりあめありんこのれつはしりだす
蟻の動きを凝視した一句
泰 山
2017年9月 走馬燈曽孫と遊ぶ米寿かな そうまとうひまごとあそぶべいじゅかな
曾祖母と曽孫の遊びが、齢の差を超えて何をする
匤 代
  黒揚羽弔い告げに飛びにけり くろあげはとむらいつげにとびにけり
飛ぶ黒揚羽に何となくそんな思いもよぎる
すすむ
  父の日や手酌で祝う大吟醸 ちちのひやてじゃくでいわうだいぎんじょう
父の日に届いた大吟醸を味わいながらのひとり酒
かずお
2017年8月 雨しとど蟇悠然と道過る あめしとどひきゆうぜんとみちよぎる
びっしょりと雨の中蟇蛙の様を句にしたもの
小 楡
  五月雨や旅の起伏の四分休符 さみだれやたびのきふくのしぶきゅうふ
高齢者の旅は同じ間隔で休みながらの旅である
青 水
  骨組だけの水車小屋初夕立 ほねぐみだけのすいしゃごやはつゆだち
今はもう昭和の貴重な遺産でもある、残念な風物詩か?
ふみを